OOH・DOOH/マーケティングコラム
- 2025.09.25 OOH・DOOH/マーケティングコラム
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天気・気温・時間でクリエイティブが変化!DOOHの「ダイナミック配信」が実現する次世代の広告コミュニケーション。
もし、街角のデジタルサイネージが、その時々の天気や気温、時間帯に合わせて、まるで生き物のように表示する広告を変化させるとしたら。それはもはやSF映画の話ではありません。DOOH(デジタルOOH)の進化は、外部データとリアルタイムに連携し、クリエイティブを自動で出し分ける「ダイナミック配信」を可能にしました。
「暑い日には冷たいドリンクの広告」「雨が降ってきたら傘の広告」といった、生活者の「いま、ここ」の状況や気分(モーメント)に寄り添ったメッセージは、広告への関心を飛躍的に高めます。本記事では、このDOOHのダイナミック配信がどのような仕組みで実現されているのか、そして、それがもたらす次世代の広告コミュニケーションの可能性について、具体的な事例を交えて解説します。
1. DOOHにおける「ダイナミック配信」の仕組み
DOOHのダイナミック配信は、専門的にはDCO(Dynamic Creative Optimization=動的クリエイティブ最適化)と呼ばれる技術を応用したものです。その核となるのは、DOOHスクリーンに広告を配信する「アドサーバー」と、様々な「外部データソース」との連携です。
まず、広告主はあらかじめ「もし〇〇という状況になったら、Aというクリエイティブを表示する」といったルール(配信ロジック)をアドサーバーに設定しておきます。同時に、天気予報データ、気温データ、時刻データ、さらにはスポーツの試合結果や交通情報といった、リアルタイムに変動する外部データとアドサーバーをAPI連携させます。
アドサーバーは常に外部データを監視しており、設定されたルールに合致する状況が発生すると、システムが自動で判断し、瞬時に指定されたクリエイティブをDOOHスクリーンに配信します。例えば、「東京エリアの気温が30度を超えた」というデータを検知した瞬間に、あらかじめ用意しておいたアイスクリームの広告Aに自動で切り替える、といった具合です。これにより、人間の手を介さずに、状況に応じた最適な広告配信が実現されるのです。
2. 具体例で見る!状況に合わせたクリエイティブの無限の可能性
ダイナミック配信の活用法は、業種やアイデア次第で無限に広がります。ここでは、具体的な活用例をいくつかご紹介します。
例①:飲料メーカー ×「天気・気温」連動
寒い朝 (10度以下): 温かい缶コーヒーの広告を表示。「温かい朝の一杯を。」
暑い昼 (30度以上): よく冷えたスポーツドリンクの広告を表示。「渇いたカラダに、速攻チャージ!」
金曜の夜: ビールの広告を表示。「一週間おつかれさま!今夜は生ビールで乾杯!」
例②:アパレルブランド ×「天気」連動
雨が降り出したら: 防水ジャケットや傘の広告に切り替え。「急な雨でも、スタイリッシュに。」
UV指数が高い日: UVカット機能のあるパーカーや帽子の広告を表示。「今日の紫外線対策は万全?」
例③:製薬会社 ×「環境データ」連動
花粉の飛散量が多い日: 花粉症対策の医薬品広告を表示。「つらい季節を乗り切る、今日の味方。」
空気が乾燥している日: のど飴やうがい薬の広告を表示。「乾燥注意報!あなたの喉は大丈夫?」
これらの例のように、生活者がまさにその瞬間に感じているであろうニーズや不満に先回りしてメッセージを届けることで、広告は「自分に関係のある、有益な情報」として受け取られやすくなります。
3. 成功の鍵は「トリガー」の設計と「クリエイティブの量産」
ダイナミック配信を成功させるためには、事前の緻密なプランニングが不可欠です。特に重要なのが、「何が起きたら(トリガー)、何を出すか(クリエイティブ)」という配信ロジックの設計です。
トリガーとなるデータは、天候や気温だけではありません。例えば、**「応援している野球チームが試合に勝ったら、祝賀セールの広告を出す」「近隣の空港のフライト情報と連携し、ハワイ便の出発時刻に合わせて、現地の観光地の広告を出す」「自社の株価が上昇したら、企業のブランド広告を出す」**といった、ユニークなトリガー設定も可能です。自社の商材と親和性が高く、かつ生活者の心を動かすトリガーは何かを考えることが、プランニングの第一歩です。
次に重要なのが、クリエイティブの量産体制です。設定したトリガーのパターンが多ければ多いほど、それに対応するクリエイティブ(静止画や動画)をあらかじめ複数パターン用意しておく必要があります。「気温30度以上」「雨」「金曜夜」など、それぞれのシナリオに合わせたビジュアルとコピーを事前に制作しておくことで、初めてダイナミック配信は真価を発揮します。
4. 広告は「情報インフラ」へ。ダイナミック配信が描く未来
DOOHのダイナミック配信は、広告のあり方そのものを変える可能性を秘めています。広告はもはや、企業からの一方的な宣伝メッセージではありません。生活者の状況に寄り添い、時に有益な情報を提供する**「街の情報インフラ」**のような役割を担うことができるのです。
例えば、UV指数が高い日に日焼け止めの広告が表示されることは、広告であると同時に「今日は紫外線が強いですよ」という注意喚起にもなります。熱中症アラートが出ている日に清涼飲料水の広告が表示されれば、それは水分補給を促す公共的なメッセージとしても機能します。
このように、広告が生活者にとって「役に立つ情報」として認識される時、ブランドへの好感度や信頼感は大きく向上するでしょう。DOOHのダイナミック配信は、広告と社会の関係性をより良く変えていく、次世代のコミュニケーションの扉を開くテクノロジーなのです。
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