OOH・DOOH/マーケティングコラム
- 2025.09.15 OOH・DOOH/マーケティングコラム
-
DOOHとリターゲティング広告の連携術。屋外で接触した潜在顧客をオンラインで刈り取る鉄板シナリオ。
DOOH(デジタルOOH)広告で、街行く多くの人々の注目を集めることに成功した。しかし、その一瞬の出会いを、いかにして具体的な成果、つまりWebサイトへのアクセスや商品の購入に繋げるか。これは、多くのマーケティングご担当者が抱える課題ではないでしょうか。
「あの広告、気になったな」で終わらせないための鍵は、オフライン(屋外)での接触とオンライン(Web)での追客を、データによってシームレスに繋ぐことにあります。それを実現するのが、「DOOH×リターゲティング広告」という連携術です。本記事では、DOOHで出会った潜在顧客を、Web広告で的確に捉えて刈り取るための「鉄板シナリオ」を、その仕組みから具体的な実践ステップまで、徹底的に解説します。
1. 連携の土台:位置情報データで「DOOH接触者」を特定する仕組み
この連携術の根幹をなすのが、スマートフォンの「位置情報データ」です。もちろん、個人を特定するものではなく、プライバシーに配慮した形で匿名化・統計化されたデータが活用されます。
その仕組みはこうです。まず、ユーザーの許諾を得ているスマートフォンアプリなどから、端末の広告識別ID(IDFA/AAID)と、その端末が「いつ・どこにあったか」という位置情報データが、データプロバイダー(DMPなど)に蓄積されます。一方で、DOOH広告が「どのスクリーンで、いつ放映されたか」という配信ログも記録されています。
この2つの情報を突合することで、**「特定のDOOH広告が流れていた時間帯に、そのスクリーンの視認範囲内にいたであろう広告識別ID」**を割り出すことが可能になります。こうして抽出された広告識別IDのリストが、いわゆる「DOOH接触者オーディエンス」となるのです。このオーディエンスリストを作成できることこそが、オフラインでの出会いをオンラインでの追客に繋げるための、全ての始まりとなります。
2. 架け橋:オフラインの出会いをオンライン広告に繋ぎ込む
「DOOH接触者オーディエンス」が作成できたら、次はこのリストを、実際にWeb広告を配信するためのプラットフォーム(DSPやSNS広告プラットフォームなど)に連携させます。これが、オフラインとオンラインを繋ぐ「架け橋」の役割を果たします。
データプロバイダーは、抽出した広告識別IDのリストを、Facebook/Instagram、X(旧Twitter)、LINEといった各種SNS広告や、主要なDSPと連携させます。広告主は、これらの広告プラットフォームの管理画面上で、連携された「DOOH接触者オーディエンス」を、広告の配信ターゲットとして指定することができるようになります。
これにより、**「〇〇駅のビジョンで広告を見た人だけに、Facebookで追客広告を配信する」**といった、これまで不可能だったコミュニケーションが実現します。広告主は、もはやオフラインとオンラインを別々のものとして考える必要はありません。DOOHでブランドへの関心の種をまき、その種が芽吹くのを待つのではなく、Web広告という水を与えて、積極的に刈り取ることができるのです。
3. これが鉄板シナリオ!DOOHリターゲティング実践3ステップ
では、具体的にどのような手順でキャンペーンを設計すれば良いのでしょうか。アパレルブランドの新作コートのプロモーションを例に、鉄板シナリオを3つのステップでご紹介します。
Step1【認知形成期】:DOOHで強烈な第一印象を刻む
まず、ターゲット層が多く行き交う主要駅(例:新宿駅、表参道駅)のDOOHで、新作コートの魅力が伝わる15秒の動画広告を1週間集中的に放映します。ここでは、細かい説明は不要です。上質な映像と音楽で、コートの持つ世界観や「素敵だな」という憧れを強烈に印象付けることに注力します。同時に、裏側ではこの広告に接触したであろうユーザーのオーディエンスリストを作成していきます。
Step2【興味喚起期】:SNS広告で「再会」を演出し、自分ゴト化させる
DOOHの放映期間中、あるいは終了直後から、Step1で作成した「DOOH接触者オーディエンス」に対してのみ、InstagramやFacebookでリターゲティング広告を開始します。「あの駅で見た、注目の新作コート」「新宿で話題。あのコートの秘密をチェック」といったコピーと共に、DOOHで見たのと同じコートの広告を配信し、「再会」を演出します。ここでは、複数のモデルが着用している画像や、機能性を伝える短い動画など、より商品の詳細が分かり、ユーザーが「自分ゴト化」できるようなクリエイティブを用意します。
Step3【刈り取り期】:限定オファーで最後のひと押し
リターゲティング広告をクリックしたユーザー、あるいはクリックはしなかったものの、動画を最後まで視聴したユーザーなど、特に興味関心が高い層をさらに絞り込みます。彼らに対して、「オンラインストア限定 10%OFFクーポン」や「送料無料キャンペーン」といった限定オファーを提示する広告を配信し、ECサイトでの購入(コンバージョン)へと繋げる、最後のひと押しを行います。
4. 連携効果を可視化し、成功に導くための計測指標
このシナリオの成否を判断するためには、適切なKPI設定が不可欠です。見るべきは、最終的なコンバージョン数だけではありません。
Web広告のパフォーマンス向上率: DOOH接触者へのリターゲティング広告が、全く接触していない層への広告と比較して、CTR(クリック率)やCVR(コンバージョン率)がどれだけ高いかを確認します。この差(リフト値)こそが、DOOHによる「事前の刷り込み効果」の証明です。
サイト内行動の変化: DOOH接触者オーディエンスの、Webサイト訪問後の直帰率は低いか、回遊ページ数や滞在時間は長いか、といったエンゲージメントの質にも注目します。
来店リフト率(実店舗がある場合): 広告接触者(DOOHのみ/Web広告のみ/両方)と、非接触者とで、実店舗への来店率にどれだけ差が出たかを計測します。DOOHとWeb広告の両方に接触した層の来店率が最も高ければ、オンラインとオフラインの相乗効果を明確に示すことができます。
DOOHとリターゲティング広告の連携は、顧客の認知から購買までの道のり(カスタマージャーニー)を、データに基づいて一気通貫で設計する、現代のマーケティングにおける強力なソリューションなのです。
映像制作から承ります


