OOH・DOOH/マーケティングコラム
- 2025.08.13 OOH・DOOH/マーケティングコラム
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クリックだけでは測れない価値。OOH広告が生み出す「間接効果」を可視化し、Web広告の成果を底上げする方法。
企業のマーケティングご担当者の皆様は、広告の効果を判断する際、クリック数やコンバージョン数といった直接的な指標に注目することが多いのではないでしょうか。特にデジタル広告の世界では、これらの指標は費用対効果を測る上で非常に重要です。しかし、その一方で「ラストクリック至上主義」に陥り、顧客の購買行動に影響を与える他の重要な要素を見過ごしてしまう危険性もはらんでいます。
その代表格が、OOH(屋外・交通広告)などが生み出す「間接効果」です。OOH広告は、直接的なクリックを生むことはありませんが、水面下でWeb広告のパフォーマンスを静かに、しかし確実に押し上げる力を持っています。本記事では、この目に見えにくい「間接効果」の正体と、その効果を可視化し、マーケティング全体の成果を最大化するための具体的な手法について解説します。
1. OOH広告の「間接効果」とは?Web広告のCPAを改善する隠れた力
OOH広告の「間接効果」とは、広告接触が直接的なアクション(クリックや購入など)に結びつくのではなく、生活者の認知や心理に影響を与えることで、時間を置いてから、あるいは別のチャネル経由で、最終的な成果に貢献する効果のことを指します。
多くのデジタル広告効果測定は、コンバージョン直前のクリック(ラストクリック)を評価するアトリビューションモデルに依存しています。しかし、生活者の行動はもっと複雑です。例えば、「①通勤中の駅でOOH広告を見て、新商品の存在を知る」→「②数日後、休憩中にスマートフォンでその商品名を検索する(指名検索)」→「③表示されたリスティング広告をクリックして、公式サイトで購入する」という購買プロセスを考えてみましょう。この場合、ラストクリックであるリスティング広告に全ての成果が割り当てられ、最初のきっかけとなったOOH広告の貢献は計測上「ゼロ」になってしまいます。
しかし、実際にはOOH広告による事前の「刷り込み」がなければ、②の指名検索は発生しなかったかもしれません。このように、OOH広告はブランドへの関心を喚起し、自発的な検索行動を促すことで、結果的にWeb広告、特にCPA(顧客獲得単価)が低く、成約率が高いとされる指名検索経由のコンバージョンを増やすという、重要な役割を果たしているのです。
2. 間接効果の具体例①:指名検索(ブランドサーチ)の増加を捉える
OOH広告の間接効果を測る上で、最も分かりやすく、重要な指標が**「指名検索数の増加」**です。指名検索とは、GoogleやYahoo!などの検索エンジンで、企業名、ブランド名、商品名などを直接入力して検索する行動を指します。これは、ユーザーのニーズが顕在化しており、比較検討の段階を飛び越えて、そのブランドに直接アクセスしようとしている非常に質の高い行動です。
この指名検索数を可視化するためには、特別なツールは必要ありません。普段お使いの「Googleアナリティクス」や「Googleサーチコンソール」で、OOH広告の掲出期間と、その前後の期間を比較するだけです。特に、OOH広告を掲出した特定のエリア(都道府県や市区町村)に絞ってデータを見ることで、より精度の高い分析が可能になります。
例えば、大阪エリアで集中的にOOH広告を展開した場合、Googleアナリティクスで大阪からのアクセスに絞り込み、自然検索流入における指名検索キーワードのセッション数が、キャンペーン期間中にどれだけ増加したかを確認します。この増加分こそが、OOH広告が生み出した「間接効果」の明確な証拠の一つとなるのです。指名検索の増加は、Web広告全体の効率を大幅に改善する起爆剤となります。
3. 間接効果の具体例②:Web広告のエンゲージメント率とCTRの向上
OOH広告は、まだあなたのブランドを知らない、あるいは興味を持っていない「潜在層」の認知を大きく引き上げる効果があります。そして、一度でもリアルな世界でブランドに接触したことのある人は、Web広告の世界でもそのブランドに対して、よりポジティブな反応を示すようになります。これを心理学で**「プライミング効果」**と呼びます。
具体的には、以下のようなWeb広告指標の向上が期待できます。
ディスプレイ広告やSNS広告のCTR(クリック率)向上: 見覚えのあるブランドのバナーや広告は、全く知らないブランドのものに比べて安心感があり、クリックされやすくなります。
動画広告の視聴完了率の向上: OOHで認知したブランドの動画は「あの広告の会社か」という興味から、スキップされにくくなります。
リスティング広告(非指名)のCTR向上: 「化粧水 おすすめ」といった一般的なキーワードで検索した際も、広告文にOOHで見たことのあるブランド名が入っていると、目に留まりやすくなり、クリック率が向上します。
これらの効果は、OOH広告の掲出エリアと非掲出エリアとで、各種Web広告のパフォーマンス指標を比較する「エリアテスト」を行うことで計測できます。OOHによって作られた「認知の土壌」が、Web広告の成果をいかに引き上げているかを実感できるはずです。
4. OOHの間接効果を最大化するプランニングと分析のポイント
OOH広告の間接効果を最大限に引き出すためには、計画段階からデジタル施策との連携を意識することが重要です。
まず、クリエイティブの連動性です。OOH広告で使用するビジュアルやキャッチコピーを、Web広告やランディングページでも一貫して使用することで、ブランド体験に連続性が生まれ、記憶への定着率が飛躍的に高まります。また、OOH広告には多くの情報を詰め込まず、覚えてほしい**「検索キーワード」**を大きく、分かりやすく提示することも、指名検索を促す上で非常に有効な手法です。
次に、分析の視点です。前述の通り、ラストクリックだけを見ていては、OOHの真価を見誤ります。キャンペーン期間中は、Googleアナリティクスなどで「参照元/メディア」のレポートを見るだけでなく、「エリア別」のレポートや「指名検索キーワード」の推移を定点観測する習慣をつけましょう。可能であれば、OOH掲出エリアとそうでないエリアのユーザーの動きを比較する「ジオ(地域)リフト調査」などを実施すると、より客観的なデータで効果を証明できます。
OOH広告は「打ちっぱなし」の施策ではありません。デジタルと連携し、その間接効果を正しく評価することで初めて、マーケティング全体のROIを最大化する強力なエンジンとなるのです。
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